「着物の国のはてな/片野 ゆかさん著」レビュー

本・映画等

ごきげんよう、椎名さん。です。

本日は「着物の国のはてな/片野 ゆかさん著レビュー」です。

この本はどんな本?

2020年9月30日、集英社さんから出版された本です。
著者はノンフィクションなどを書かれている片野 ゆかさん。

タイトルの通り
着物にまつわる「?」を調べて書いた本です。

「着物の本」というと絵や写真を使ったものが多いです。
それは着物がファッションのジャンルであり
視覚に訴える構成の方が見やすいし分かりやすいし
言いたいことが伝わりやすいからだと思います。

でもこの本はそんな「着物の本」の中にあって
ほぼ文章のみで構成されています。

そして著者の片野 ゆかさんは
着物関連のお仕事をされていない方。

純粋に「なんで?」と思ったことを
ご自身の足で調べています。

分からないことばっかり!な初心者キモノスキーから
「そういうものだからそのまま受け入れているけれど
本当は何で?って思ってることがあるよ・・」
なベテランキモノスキーまで
読むと「へー!!」って思えることが詰まっている1冊です。

この本の構成

書籍「着物の国のはてな」は

・はじめに
・やっぱり着物は遠かった!
・着物警察を撃退する方法
・何かと不便で面倒なのだ
・キモノ業界は謎ばかり
・このケッタイな衣服とのつきあい方
・おわりに

の5章からなっています。

着物を着たいと言うと
「簡単だよー。大丈夫だよー。」
と着物を着ている人たちは言うのに
いざ始めてみると
「えー!なんで?!」
となることが多い。

その「なんで?!」にぶち当たりつつ
自分と着物の適正距離を作っていく様はかなり本当に参考になります。

この本の見どころ(読みどころ?)

繰り返しますがこの本を書いている片野 ゆかさんは
着物関連のお仕事をしている方ではありません。

それゆえ着物のルールに対する「?」は
初心者キモノスキーと同じ!という部分が多いのではないかと思います。

そしてご職業がノンフィクション作家さんですから
その「?」を調べるのがとってもお上手。

調べる先も着付の先生はもちろん、
日本中世史の研究をされている大学教授、
美術館の学芸員さん、
和装小物メーカーの担当者さん・・・など等
色んな人に質問して答えを聞き、
その上でご自身の着物との付き合い方や考え方を手にしていきます。

この
「自分でできる範囲で調べて疑問を解消すること」と
「その上で自分と物事の適正距離を導き出すこと」は
着物のことだけでなく
とても必要なことなのではないかと思っています。

その姿勢も参考になるのです。

私がハッとしたところ

ここからは中でも私がハッしたところをお伝えします。
本を読めば各々ハッとしたりグッと着たりする部分は違うと思いますが
私はこういうところにハッとしたよ。
というお話です。

着物の国は”粋VSはんなり”でできていた


(私のセンスは粋かはんなりか・・・?)

着物は西と東でセンスが違う。
というお話を聞いたことがありました。

私は西日本出身、関東在住ですが、
その話はあまりピンときていませんでした。

どういうのが西っぽいセンスで
どういうのが東っぽいセンスなの?
私が着ている着物はどっちっぽいの・・・?
と思っていました。

その答えがここにある!
と思いました。

私は西と東で違う、と聞いてピンときていませんでしたが
正確には京都と江戸のセンスの違いということなんでしょう。

言われてみれば確かに!!
と思いました。

「素敵」とされているものが違えば
たどり着く美しさも違う。
当たり前と言えば当たり前なのですが
「私はこっちが好きだなー」
が分かっていればコーディネートもしやすいように感じます。


着付ルールに王道はあるか?

これはもう着物を着ようと思ったら
不安になること第一位なのでは?!
と個人的には思っているのですが
着物って決まり事多くないですか・・・?
やれああしろこうしろと・・・。

普段着キモノスキーな現在は
「それは私の生活スタイルに合わないわー」
とスルーしていることもたくさんありますが
始めるころは
「どこまで知らなくても許されるのか・・・何も知らない・・」
みたいなひとりチキンレースを繰り広げていたように思います。

→関連記事「普段着物着た後どうしてる?ズボラなルーティンの現実」
→関連記事「着物警察撃退法?!~私はこうしてきました~」

第4章で出てくる「キモノ業界は謎ばかり」と併せて読むと
そのあたりの「?」を解消してくれます。

私にとって何より目からうろこだったのは
現在の着物ルールとされているものは
「この人がこの本で提唱したもの」
とハッキリわかっているというところ。

過去私は「着物警察は他人事じゃない?!自分が着物自警団にならないために気を付けていること」
でも少し触れていますが
数ある着物のルールについて、ある日マナー講師が
「こういうルールです」
と言い始めて一般化したってこともあるのでは?
という疑問があったのですが
それが本当にそうだったんだ!!という衝撃がありました。

そしてこのルール本に書かれている内容については
大手着物メーカーのやまとの社長までも
「あれを守ろうとしたら着物着るのが苦しくなると思う」
というものだそう。

あんなにビシッとした着こなしを提唱している会社の社長でさえもそう思うのだから
どれだけ・・・と怖くなるとともに
怖いもの見たさでちょっとその本を読んでみたい気にもなりました(笑)


(実はこれはやまとさんの着物)

呉服屋さんや着付教室の闇について

以前「呉服屋さんは怖い?!初心者キモノスキーにはオススメしない理由と対処法」を書いた時
結構反響がありました。
それくらい呉服屋さんを怖いと思っている人多いんだなーと思った記憶です。

こちらについてもデータとともに調べられていて
あーなるほどーやっぱり・・・と思えました。

そしてそれと同じくらい疑問なのが
「無料着付教室」のお話。

無料なのに宣伝に使っているのが有名女優だったりして
そのお金はどこから出るの!?
やっぱり売りつけられるのでは?!
という疑問(というより不安)はついて回ります。

この本の中ではそこにも切り込んでいて
行っても良い着付教室の選び方にも触れています。

本や動画では分からない・・・
やっぱり着付教室に行きたい・・・
と思っている人はこちらを読んで参考にすると良いのでは。
と感じました。

私自身はほぼ独学で着物を着られるようになりましたが
コロナが落ち着いたら
どこかの教室に行ってみたいなーとも思っているので
参考にしたいと思いました。

面倒なところを端折りつつスタイルアップしたい!

全編通して言えることですが
この本は「着物を自分の生活の中に取り入れよう」としています。

殊更に格式ばったルールは、それを調べたうえで
「取り入れなくても大丈夫」と納得し、
半衿の付け方など面倒なものについては
半衿用両面テープを作っているメーカーまで行って
付け方を習い、
自分の生活で無理なく付き合っていける範囲を模索しています。

 

この方の場合わんこさんと一緒に暮らしているので
愛犬と一緒にカフェに行ける着物を目指していますが

この「自分に無理のない範囲で付き合っていく」
というスタイルにはとっても共感しました。

着物はとってもかわいいし素敵です。
でもやっぱり面倒でもあるのです。
正直に言って「着なくても全然生きていける」。

それでもやっぱり可愛いし着たくなる!
ならば、ちょうどいい距離を探すことが大事だと思うのです。

以前書いた「「帯結ばない帯結び ayaayaさん著」レビュー」でもそうですが
気軽に着よう!と言ってくれる人は今たくさんいます。

そういうことを参考にしつつ
自分の最適スタイルを見つけていけたらなと思っています。

まとめ


(ちょうどいい距離で楽しみたい)

「着物の国のはてな/片野 ゆかさん著」
着物の世界の「うーん・・・」に切り込んでいて
読めばきっと「そうだったのね!」となる部分があると思います。

文章も読みやすく読み物としても面白いのは
流石作家さん!という感じです。

何から何まで分からない!
な初心者キモノスキーから
普段キモノスキーの本音を覗いてみたい人、
実は謎が解消されていないベテランキモノスキーや
ちょっと面白い本ないかなー・・・
と思っている読書家さんまで
全てにお勧めできる本です。

まだ読んでないよ!
って方は是非とも☆

では、また次回。
じゃぃねー。

 

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